点検方法

特殊建築物等定期調査報告制度における防火戸・防火シャッターの点検方法について

 2008(平成20)年4月に、建築基準法第12条で定められている特殊建築物等定期調査報告制度の一部が改正され、防火設備としての防火戸、防火シャッターについては「作動点検」が定められました(現在は3年以内に実施した点検の記録がある場合には点検記録の確認で良いとされています)。
 この制度のもと、当協会の資格者によって実施されている点検方法について解説します。

防火戸・防火シャッターの機能と点検基準

 特殊建築物等定期調査報告において定められているのは、防火設備としての防火戸、防火シャッターです。これらの設備は火災時にその機能を発揮するものであり、日常的に使用されていないものも多いため、その存在を認識されていない管理者、所有者も多いと考えられます。
作動、降下確認後のチェーン機構による巻き上げ作業
また、火災時に閉める随時閉鎖式の防火設備(通常は開放状態のもの)は自動火災報知設備の受信機と連動しているものが多いため、管理者や所有者は、消防法で定められている自動火災報知設備の点検の際に一緒に実施されていると認識されているようです。しかし、建築基準法で定められている防火設備の点検は、自動火災報知設備の点検とは異なることを理解して頂く必要があります。
 特殊建築物等定期調査報告に基づく防火設備の点検は、感知器や温度ヒューズを作動させて防火設備を完全に閉鎖させ、区画が形成されることを確認する「作動点検」を実施する必要があります。しかし、手動式の防火シャッターは、点検後の復旧に時間や労力がかかるために、全閉確認が行われない場合が多いことも留意すべき点です。
 自動火災報知設備、建築設備、特殊建築物調査は、それぞれが点検する設備機器の範囲を事前に決めて実施することにより、経済的にも無駄のない点検を行うことができます。

建築基準法の改正後の変化

 2005(平成17)年に建築基準法施行令第112条が改正され、防火設備の閉鎖作動時の危害防止装置等の設置が義務付けられました。それを受け、2008(平成20)年4月より特殊建築物等定期調査報告の項目に危害防止装置に関する調査項目が加わりました。
 告示の第2563号第1第一号のロには

  1. 当該防火設備の質量に当該防火設備の閉鎖時の速度の2乗を乗じて得た値が20以下となるものであること
  2. 当該防火設備の質量が15キログラム以下であること。ただし水平方向に閉鎖をするものであってその閉鎖する力が150ニュートン以下であるもの。又は周囲の人と接触することにより停止するもの(人との接触を検知してから停止するまでの移動距離が5センチメートル以下であり、かつ、接触した人が当該防火設備から離れた後に再び閉鎖又は作動をする構造であるものに限る)にあってはこの限りでないという記載内容となっています。

防火戸の閉じ力をテンションゲージで測定中

具体的に、防火戸では

  1. 防火戸の閉鎖速度を測定し、扉の重量から計算して運動エネルギーを求める。
  2. 防火戸の閉じ力をテンションゲージなどを用いて測定する。

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防火シャッターの場合は

  1. 降下時間の測定より算出した速度とシャッターの重量から運動エネルギーを求める。(10J(ジュール)以下であることを確認する)
  2. 降下中のシャッターの危害防止装置を作動させて停止距離を測定する。

という調査が必要になります。


運動エネルギーは質量と速度から求めるため、防火シャッターの降下時間を測定

告示では5cm以内停止が求められている

 また、危害防止用連動中継器には予備電源が内蔵されています。定期的な交換が必要ですので蓄電池の交換時期も重要なチェック項目です。

管理用のシャッターの維持保全状況


管理用シャッターの機構部を点検

 「特殊建築物等定期調査業務基準」では、管理用のシャッターは[任意調査項目]として下記の調査項目が挙げられています。

  1. 本体と枠等の劣化及び損傷の状況
  2. 点検口の維持保全状況
  3. スイッチ等の維持保全状況
  4. 駆動機構の状況
  5. 障害物感知装置の作動の状況

管理用のシャッターについては、日常の開閉操作時における事故防止のために点検を行うもので、電動開閉機や駆動機構の部分を重点的に調査します。

防火設備に関する既存不適格の事例

 一例として、新たに特殊建築物等定期調査報告の調査項目となった危害防止装置については、2005(平成17)年12月の建築基準法改正以前に未設置となっている防火シャッターは「既存不適格」という扱いになります。
 その他、防火設備に関する既存不適格事例としては、階段室などの竪穴区画や異種用途区画に遮煙性能のない防火シャッターが設置されている場合があります。
 遮煙性能については1973(昭和48)年の建設省告示2564号により定められた開口幅5m以下のもの、もしくは開口幅5mを超える大臣認定のもので、遮煙性能のある防火シャッターは試験に合格した構造の製品に限られます。
 また、2002(平成14)年6月から昇降路の竪穴区画に関する法令の改正により、従来のエレベーター乗場戸だけでは適合しないことになり、別途、遮炎性能と遮煙性能とを有する防火戸等の設置が必要となっています。なお、最近では、エレベーター乗場戸が大臣認定を取得し遮煙性能を持つ場合もあります(1981(昭和56)年建告第1111号の失効)。
 その他、階段室などで下部手動式の開閉機やヒューズ式の自動閉鎖装置が使用されているため、感知器連動式になっていないものも散見されます。

防火設備に関する不具合の事例

「防火戸」

「防火シャッター」

 防火設備の点検時に発見される不具合事例には火災時の閉鎖不良につながる不具合もありますので、是正する必要があります。

防火設備の点検を行う場合の留意点

最後に、防火設備の点検にあたっての留意点としては、以下の通りです。

  1. 高所作業や電気的な作業がある場合は安全に十分留意する。
  2. シャッターの構造を十分理解しておくこと。
  3. 点検には数回の開閉操作が必要であり、復旧を含め、時間的な余裕を持つこと(特に手動式の開閉機の場合、開操作に時間がかかる)。
  4. 防火シャッターの作動の仕方(降下のさせ方、復旧の方法)を事前に確認する。万一、動かなくなった場合や防災受信機に信号が送られた場合、機械警備システム作動時の連絡先を事前に確認する。
  5. 防火設備の設置場所は建物の利用者の往来の多い場所が多く、開閉操作する場合は特に周囲の人間の安全に留意する(危険な場合は休日、夜間の点検とする)。

 

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